死後のゴダールは、存在しない作品の予告編とやらでまたしても見るものを驚かせる。
ゴンクール賞受賞作家シャルル・プリニエの『偽旅券』の映画化が叶わず、その詳細なシナリオ構成をキャメラ担当のアラーニョに託し、これは自分の最高傑作だと呟いたというのだから。
実際、作中に再現される『アワーミュージック』の一景を目にしただけで、誰もが涙せずにはいられまい。
蓮實重彦(映画評論家)
自作『アワーミュージック』(2004)をアップデートしつつ、スペイン内戦からアラブの春に至るあらゆる闘争をごった煮にした本作は、シモーヌ・ヴェイユやハンナ・アーレントに連なる新たな抵抗する女性の人物像「カルロッタ」が生まれようとする現場に我々を立ち会わせてくれる。
堀潤之(映画研究者)
21世紀 / 1人ジガ・ヴェルトフ集団 / 最後のヌーヴェル・ヴァーグ / 最新作 /
輝き / 20年後の素顔に驚かされる / サンローラン / 遺書 / 市場なきクール /
最短の最高傑作 / これこそがコラージュ / これこそが反資本主義 /
菊地成孔(音楽家・文筆家・「ラディカルな意志のスタイルズ」主宰)
私は思春期に、まるで宇宙人が作ったかのようなゴダール映画に遭遇し、確実に何かを殺され(その代わりに何かを生かされ)、どこかを乗っ取られてしまった。この映画がゴダールの遺言なら、そのすべてを自分の戒めとしようなどと勝手に思い込んでしまうのも、そのために違いない。
万田邦敏(映画監督)